世界的な金融システム不安の中で、日本の株価はバブル後の最安値を更新した。多額の株式を保有している銀行部門は、自己資本の大幅な目減りに直面している。そこで銀行自己資本の現状を分析してみよう。 公表自己資本と実質自己資本 日本の銀行は1997年から2003年にかけて深刻な経営危機に直面した。しかしその実態は、公表自己資本の数字を見てもまったく見えてこない。表に示したように、全国銀行の公表された自己資本額(C列)は、90年代半ば以降30兆円前後を維持していたからである。公表数値が安定していたのは、経営が悪化した銀行が不良債権損失を帳簿に出さないようにしたり、累積欠損を持つことによる将来の節税効果を資産として計上したりすることで、自己資本を大きく見せてきたからである。そこで、銀行自己資本の化粧をはがすことで、経営実態の推移を見てみよう。 銀行の実質自己資本の計算過程は、表に示してある。要はFX (C列)の数値を基に、開示されている資料によって修正することで、実質自己資本を推計している。修正内容は次のとおりである。 【株式含み益】 2000年度末までは銀行が保有する株式は簿価で資産に計上されていた。バブル崩壊後、日経平均株価が大幅に低下するまでは、銀行が保有する株式の時価(A列)は簿価(B列)を大幅に上回っていた。そこで実質自己資本を計算するために、株式の含み益を資産に計上すると同時に、含み益を実現した場合に課されると見込まれる将来の課税見込み額(繰延税金負債相当)を差し引いている。法人税率を国と地方の合計で約40パーセントと置いて、含み益の6割分だけを実質自己資本に算入する。 【繰延税金資産】 国際会計基準の導入で98年度末から銀行は日経225 の繰延税金資産を計上するようになった。銀行の繰延税金資産は、主に2つの要因で発生する。第1に、繰越欠損金があると将来利益を出しても繰越欠損と相殺されることで課税されないという節税効果がある。この節税の見込み額を資産計上している。 第2に、貸し倒れが発生した場合でも法的な倒産処理が始まっていない時点では、税務当局がその期のうちに損失計上することを認めない場合がある。これは、財務会計上は貸し倒れを損金処理しても、課税所得から差し引くことが出来ず、過大な税金を支払っていることになる。この税金の過払いは、将来に損金処理を認められた時点で戻ってくる計算になる。この税金の過払い分を資産に計上できる。 しかしいずれの場合も、将来の節税額の推計値であり、近い将来利益が出せる見込みがないと回収できない。将来の利益を大きく見込めば、繰延税金資産を計上できるが、利益を出す前に破綻すれば無価値になってしまうため、清算価値はない。米国では繰延税金資産の計上を厳格に制限していたが、日本の当局は無制限といっていいほど自由に繰延税金資産の計上を認めてきたため、自己資本の大部分が実体のない繰延税金資産になった銀行も存在した。そこで本稿の実質自己資本からは、繰延税金資産(D列)を全額控除している。 【推定貸倒引当不足額】 90年代に不良債権問題が深刻化する中で、銀行は不良債権に対する貸倒引当金を低めに見積もることで自己資本を過大に見せていた。本稿では不良債権問題が最も深刻化した時期に必要と判断された推定必要貸倒引当金と実際の引当金の差額を推定貸倒引当不足額(E列)として、公表自己資本から控除している(表の推計式参照)。 【公的資本】 政府が銀行に注入した公的資本は、確かに銀行の自己資本であるが将来返済することを約束しているため、自前の自己資本とは言い切れない。銀行が上場している株式は、一般に配当などで公的資本に劣後する地位にあり、上場株式時価総額に対応するのは、公的資本を除いた自己資本になる。そこで、公的資本(F列)を控除して、実質自己資本を推計した。 資産運用 の現状 日経平均株価が1万2525円だった08年3月末時点では、銀行の保有する株式時価額は25.6兆円であった。日経平均株価が8000円まで下落すると、銀行部門の保有する株式の時価が日経平均に比例的に変化すると仮定して、保有株式の時価額は16.4兆円にまで減少し、約9.2兆円自己資本が減少する。その場合、純民間の実質自己資本は8.7兆円まで減少し、まだ金融危機から経済が立ち直っていなかった04年度末を下回る可能性がある。
日本の社会保障の多くが年金など高齢者のための支出に向けられ、子供を持つ若い家族を助けるための支出はごくわずかであることが、度々指摘されるようになってきた。 図は、日本、ドイツ、イギリス、オランダの社会保障支出の対国内総生産(GDP)比を、高齢者向け支出、医療費、児童手当・保育所など家族向け支出、失業手当・職業訓練など労働支援、住宅支出を含むその他の項目に分けて示したものである。ここでスウェーデンなどの北欧諸国やアメリカを除外したのは、北欧のような高福祉高負担国になろうと考えている日本人は少なく、また、世界金融危機の根源となってますます評判の悪いアメリカの社会保障をまねようと考えている日本人も少ないと思ったからだ。 日本の高齢者向け社会保障支出は低くない 日本の社会保障支出全体の対GDP比は2003年で17.7%と、国際的に見て低いが、投資信託 の支出に関しては9.3%であり、ドイツの11.7%より低いものの、イギリスの6.1%、オランダの5.8%を大きく上回っている。では、何が低いのか。日本は医療費も低いが、もっとも低いのは家族を助ける支出だ。日本の0.7%に対して、ドイツは2.0%、イギリスは2.9%、オランダは1.6%だ。イギリスは、高齢者のための支出が日本の3分の2にすぎないのに、子供のためには日本の4倍以上も支出している。イギリスは、高齢者が我慢して、子供を育てる若者を助けている。これこそがジョンブル魂だと私は思う。 日本が、中福祉中負担の国家を目指すなら、まず若者を助けるべきではないだろうか。高齢者向けの社会保障支出は、すでにイギリスやオランダを上回っているのだから。現在、消費税を早期に引き上げて高齢社会を支えようという議論があるが、今引き上げた消費税収は今使ってしまい、将来、本当に必要になったときには残っていないだろう。すなわち、団塊の世代の人々が本当に高齢化し、医療費を使い、年金をフルに受給し始めた時には、今引き上げた税収はすでに使い果たされているだろう。 もし、今、消費税を引き上げるなら、その税収は、家族対策に使うべきだ。その理由は、第1に、すでに高齢者への社会保障支出は、ヨーロッパの福祉国家を上回っているからである。第2に、家族対策に使って子供が増えれば、将来の担税力が増すことになるからだ。第3に、子供が増えなくても、今の子供のために使えば、将来、彼らに税を課すとしても、まだ公平になるからだ。 残念ながら、今消費税を上げて、現在の高齢者のために使ってしまおうという議論が盛んになっている。もちろん、現在は不況で消費税増税は不可能だが、「スキあらば増税」の風潮があることは否めない。
内閣府はこのほど、全国の20歳以上の成人1770人を対象にニセモノに対する個別面接調査を実施して、その結果を発表した。それによると、日本人はニセモノに対する抵抗感がそれほど強いとは言えず、政府のニセモノ防止の啓発活動もさほど成果が出ていないことが示された。ニセモノ根絶には、根気強い対応策が必要なようだ。 3人に1人がニセモノ購入を見聞 この調査は、知的財産に関する国民の意識を調査して政府の施策の参考にしようとするものであり、2004年度と06年度にも同様の調査を行っている。この調査で言うニセモノとは、製品の模倣品、商標やブランドのコピー製品、CDやDVDの海賊版などを総称している。 上海の街角で売られている海賊版。 設問の第1は、「ここ数年の間に、あなたの身の回りでニセモノであることをわかった上で、おみやげなどで海外からニセモノを購入したり、インターネットを通じてニセモノを購入したりしているのを見聞きしたことがありますか」というものだ。 回答は、「ある」とした人が34%で「ない」とした人が65%だった。06年の調査では「ある」が39%、04年の調査では33%であり、大きな変化はないことになる。今回の調査によると、世の中の3分の1の人は、何らかの形でニセモノを購入している実態を知っていることになる。 広く潜在するニセモノ容認の意識 続いて「ニセモノであることをわかった上でニセモノを購入することについて、どう思いますか」という設問については、次のような結果になった。
ニセモノ商品・海賊版没収は賛否が二分 筆者が勤務する東京理科大学知財専門職大学院の授業に「知的財産戦略論」がある。この授業は、日本の知財分野で活動する専門家に来てもらって講義をしてもらい、授業の最後には「10分間論文」として、院生に課題を与えて論述してもらう授業がある。 日本弁理士会会長を務めた下坂スミ子先生は、授業内容とは別にこの3年間同じ課題を出して、院生たちの意識の変化を研究している。その「10分間論文」の課題は、「あなたが所持しているニセモノ商品・海賊版を没収されることに賛成か反対か。その理由と共に論ぜよ」というものだ。 この3年間の「定点観測」結果は次のようなものである。 賛成 反対 06年院生 29(48%) 31(52%) 07年院生 47(73%) 17(27%) 08年院生 20(49%) 21(51%) この結果を見ると、06年と08年は賛否ほぼ同数に分かれている。07年は賛成が73%となり、知財の重要性を理解している専門職大学院の院生の考えが反映されたかに見えたが、08年にはまた同数に分かれてしまった。 筆者が客員教授をしていた早稲田大学の知財オープン講座で、模倣品と知財について講義した際に、下坂弁理士とまったく同じ課題で学生に10分間論文を書かせて賛否を問うた結果も、賛否はほぼ同数であった。 こうした結果を見ると、この強制的に没収するという対応策に対する賛否は、ほぼ二分しているのではないかと思う。 院生が書いてきた代表的な意見を紹介すると次のようなものがある。 <代表的な賛成意見> ・ 新しい製品を開発するには、それを生み出すまでに時間もコストもたくさんかかっている。それがペイするためにも物まねは許されず、没収という対応は必要だ。(同様意見多数) ・ 没収する場合は、民法上の所有権という問題もあるが賛成である。なぜなら、商品を選択して購入したのは消費者である。いまはインターネットなどによって消費者が商品について多くの情報を知ることができる。そのような状況の中での選択なのだから、違法であることを知らない場合は非常にまれだ。没収まで認めても不合理ではない。 ・ CDやDVDなどの海賊版の流通金額は40兆円以上にものぼる。言い換えれば、正当な権利者の利益が少なくとも40兆円損なわれているということだ。これは金額だけではなく、ブランドイメージの毀損(きそん)や信用失墜、価格への影響など2次的な損害にもつながっている。これでは努力して創造的なものを生み出すことへの意欲がなくなり、イノベーションも期待できなくなる。没収するのは当然である。(同様意見多数) <代表的な反対意見> ・ 一度、個人の所有物となった以上、これを没収するのは個人の権利を侵害することになるので強制的に没収することは許されない。(同様意見多数) ・ ニセモノ、海賊版を買う場合でも、それがニセモノ、海賊版と分かっているとは限らない。ニセモノ商品を根絶するためには、消費者側からではなく、製造者、販売者側から対応するのが適切であり確実である。だから消費者から没収することは反対だ。 ・ 買う人がいるからニセモノが出回るのであり、ニセモノを買わない教育、啓発をするのが先だ。そのような努力を十分にしないでいきなり没収は行き過ぎではないか。(同様意見多数) ・ ニセモノ・海賊版と知って買った物品が没収されるのは仕方ないが、知らないで購入した人もいるはずだ。それを一律に没収するのは賛成できない。(同様意見多数) ・ 事前にニセモノであることを知って購入する場合は、それ自体レジャー的な要素があり、あくまで個人で楽しむものであり、これだけでは購入者も周囲も含めて本物のブランドの評価を下げていない。ただし、あまりに精巧なものをあたかも本物のように売り、販売者も本物であるとだますような行為に対しては取り締まりをする必要がある。