この「三ヶ月」の数字が、私の頭に染み込んでいた。
だから、十月になると、「ああ、今年も年越しだけは無事にできそうだなあ」とささやかな安堵を感じたものだ。 つまり、十月から数えて三ヶ月目は翌年の一月。
たとえ、不意に人事部に呼ばれ、「解雇」を通告されたとしても、社員の身分と給料は三ヶ月間保証されるから、正月を失業の身で迎えることだけは避けられるわけだ。 実際は、最初の一、二年はともかく、その後は人並みの営業成績をあげていたのだが、毎年十月になり、クリスマスカードが店頭に並ぶ頃になると、「今年も無事に越せるなあ」と思う癖がついてしまっていた。
イギリス人にとって(アメリカ人もそうだが)、クリスマスとは、十二月二十四日のイブと二十五日のクリスマスデイだけではない。 十二月から一月初めにかけては、「クリスマスホリディ」の季節であり、ほぼ一ヶ月間、浮き浮きした雰囲気で過ごすことになる。
それは、日本の「年末」のあわただしさに似ているが、少し違う。 日本の「正月」とも異なる、独特のものである。

シティも、クリスマスの季節は華やいだ気分に包まれる。 オフィスビルのロビーにはそれぞれ、競うように大きなクリスマスツリーが飾られる。
そして、これは翌年の一月初旬まで片付けられることはない。 個人の家庭においても同様だ。
私はアメリカでの駐在経験があるので慣れてはいるが、クリスマスのムードは二十五日に終わり、ツリーはすっかり片付け、しかる後、正月に向かってなだれこんでいく日本との違いに、着任したばかりの駐在員は大いに戸惑うようだ。 さて、イギリスのクリスマスは、ショッピングとパーティの季節でもある。
シティでも、企業によっては、「クリスマスショッピング」のために半日休暇を認めているところもある。 何しろイギリス人は、家族や親しい友人だけでなく、夫、妻それぞれの両親、それぞれの兄弟、その子供たちが一堂に会して、クリスマスパーティを開くから、そのために贈り物の準備をしなければならない。
誰に何をあげようか、と彼らは真剣に考える。 クリスマスはいいけれど、贈り物で頭を悩ますのが憂麓だというイギリス人もいるくらいである。
この時期、郵便局はいつも込んでおり、窓口に長蛇の列が出来る。 カードを出す人たちが並ぶからだが、さまざまな大きさの包みを抱えている人も多い。
遠く離れている家族や親戚に、クリスマスプレゼントを送る人たちである。

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